「ハチ公、今日は御馳走だから買い出しに行くぞ」
朝起きたら、笹倉そんな事を言われました
『特別番外編:イチさんの誕生日』
「何で御馳走?」
「今日はイチの誕生日なんだ」
「え!?」
そんなの知らなかった!
というか聞きもしてなかったんだけど
毎日お世話になっている身としてはやはり何かプレゼントを贈呈せねばと思うのだかしかし何をあげればよいのやらそもそも財布に金は入っているのだろうか
そんな事が一瞬にして俺の頭を駆け巡った
「さ、財布!!」
「どした?」
「俺、プレゼント用意してない!」
「いいだろ別に」
「よくないよ!!イチさんの欲しい物何か知らない!?」
「つかお前に買って貰うぐらいなら自分で買うだろあいつ」
「た、確かに…」
じゃあ俺にしかあげられないものをあげれば…
「て、貞操…?」
「はい?」
「いや、無理無理それは無理!!!」
「どしたのお前」
「なんでもない!!」
つか俺の貞操なんていらないよな、うんうん
そんなこんなで笹倉と買い出しにいってケーキ買ってクラッカーも買って
パーティーの準備万端の状態になった訳だがしかし
「イチさん、でてこないな」
「腹減ったな」
いつまで経ってもイチさんが出てくる気配がありません
仕事をしているのか、もしくは寝ているのか…
仕事中ならば下手に入ると鬼のような形相で怒られる
寝ているならば下手に起こそうとすると痛い目をみる
結局イチさんが自発的にでてくるのを待つしかないのだ
そして1時間後
ガラリ
「腹減った」
「「でたー!!!」」
御馳走を前にして耐え忍んだかいがあり
その日の夕飯はたいそう美味かった
「別に呼んでくれればよかったのに」
「呼べばお前怒るじゃねえか」
「そうかな」
「そうだよ」
イチさんのあれは無自覚なんですか、そうですか
「食い過ぎた」
「御馳走だったすからね」
笹倉の気合いの入りまくった料理だけでもかなりのボリュームだったのに
その後のデザートのケーキまで食べたらかなり腹がいっぱいになった
ケーキもこれまた美味いんだ
「そういえば何で御馳走だったんだ?」
「え?だって今日イチさんの誕生日なんでしょ?」
「は…?」
イチさんは固まってしまった
え、何違うの
「え、もしかして違うの?」
「すっかり忘れてた」
「そっちかい」
思わず声に出してツッコんでしまったよ
「プレゼント…」
「え?」
「…貰ってない」
「笹倉は御馳走がプレゼントだっていってたよ」
ちょっとびっくりした
イチさんてプレゼント欲しがるタイプだったんだ
俺たいしたもん用意してないけど大丈夫かな…
「ハチ公は?」
「あっはははは」
こうなったらもう笑ってごまかすしかない
俺はさっき即効で作った紙切れをイチさんに渡した
「何これ?」
「10枚綴りですからね!」
「抱き枕券…何コレ?」
「まんまです、俺を抱き枕にしたい時はこれを…」
使って下さい、と
全ていい終わる前にイチさんに抱き着かれた
「ハチ公」
「ど、どうしたんですかイチさん!?」
「すげー嬉しい、大事に使う」
「そ、そうすか?ありがとうございます」
こんなんで喜んでくれるなんて…
安上がりだなイチさん
「じゃあ、はい」
「はい?」
差し出されたのはさっきあげたばかりの紙切れ
ああ、成る程ね、まあ、そうですよね
「使う」
「…はい」
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2周年記念でした。
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