イチとハチと笹倉




















今日は日曜日
珍しくイチさんは俺より早く起きていた











『鮮やかな仕返し』















「おはよーゴザイマス」
「おはようハチ公」
「おそよーハチ公、今日はいい天気だからさっさと洗濯しろ」


笹倉は特上スマイルでそんな事を言ってくる
自分でやればいいのに、と思いつつまあ俺の仕事なので仕方ないかとため息をこぼす
日曜の朝ぐらいちょっと遅く起きたっていいじゃないか
まあ毎日早く起きてないんだけどな















洗濯機を回して一息つく頃には腹が鳴っていた
そういえば俺朝飯食ってねえや













「笹倉、何か食べ物ある?」
「パンと目玉焼きならあるけど」
「それでいい、腹減った」
「へいへい」




食事関係は基本笹倉がやってくれるので俺は机に飯が運ばれてくるのを待つ
したらばなにやら横から視線を感じた







「イチさん、何か…?」
「ん」






返事をするものの視線を外さずガン見し続けるイチさん
なんだ、何なんだ、この人考えてることがさっぱりわからないからちょっと怖い







「俺に何かついてます?」
「いや…仲いいなあと、思って」
「へ?」
「ハチ公と笹倉」
「そ、そうですか?」
「敬語使うし」
「へ!?」





いや、笹倉は別に遠慮がいらないというか
イチさんは緊張してしまうというか構えるというか
気安く呼べないというか、そもそも年上だし(笹倉もだが)






「おー何だイチ、焼きもちか?」





笹倉がご飯を持ってきた、パンと目玉焼きとコーヒーまである、やった









「…」
「あれ、否定しないって事はマジか?」
「嘘!!?」





何かイチさんが一気にかわいく見えるようになった




「ハチ公は俺が拾ったの」
「へいへい誰も取らねえから安心しろって」
「ハチ公もあんまり懐かないの」
「いや、でも一緒に住んでるんだし普通じゃないすか?」
「…」





イチさんがじっと俺を見つめる
た、耐えられないよこの視線





「わかりましたから!!そんな目で見ないで!!」
「わーい」
「お前真顔でそんな事いっても嬉しそうじゃねえぞ」
「ハチ公布団買いに行こうか」
「てめっシカトかよ!?」
「運転はハチ公がしてね」
「げ、まじっすか、最近乗ってないっすよ俺」
「ハチ公まで!!」




や、だってここで応えちゃうとまたイチさん拗ねるし
機嫌損ねて布団買ってもらえなかったら嫌だし
すまん笹倉

































しかしその日は帰ってきたら夕飯抜きという仕打ちが待っていた











































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