イチとハチと笹倉
























帰ったらドアの前に荷物が放り出されていた
しかもご丁寧にトランク一つに纏めてくれちゃってまあ








ピンポーン














『何よ』
「何コレ」
『アンタの荷物、もう出てって』
「何それ急すぎだし」
『もうアンタの面倒なんて見切れないわ』
「ああそう、今までどうもでした」
『じゃあね』














インターホン越しで姿も見せてくれない訳ですか
そんなに嫌われましたか俺
ここにいても仕方がない
金もない
しょうがないので近くの公園に行くことにした
時間も時間だし今夜は野宿だな
















『悪い癖のある男』

























ある日バイトをしていたらお姉さんに逆ナンされて
お小遣いをくれるというのでヒモになった
働かなくても金がもらえるというのは人間を駄目にする
しかしそのお姉さんはある日あっさり俺を捨てた
結婚という道を選んだのだ
割り切った関係であったからそれはいい
問題は家だった
大学に通うため一人暮らしをしていたしその家ももう引き払っていた
住む場所がない俺はしばらくは友達の家を転々として
結局また似たような女の人に縋ってヒモ生活を続けていた
その結果がこれだ
まあいい歳して働かずに何もしない好きでもない男がいても邪魔だよなあ
彼氏が出来たなら特にだろうし、できたんかな
まあ終わった事は考えない
とりあえずこれからどうしようかと考える
財布の中には2千円、わびしいな
腹が減った、しかし近くにコンビニはない
なんかもうどうでもよくなってきた
俺は公園のベンチで眠りについた






























































そして目が覚めるとそこは建物の中だった
っていうか布団の中だった





「ここ、どこ?」







とりあえず起きてみた、どうやら部屋らしい
ドアの向こうで話し声が聴こえたので近寄ってみた









バタンッ







いきなのドアが開いた










「あ、とその、こ、こんにちは?」
「ほ、本当にいる…」
「あ、起きてる」







目の前には男が二人いた
































「えーっと、それで君の名前は?」
「ハチ」
「中犬…?」
「八の夜ではちや、皆ハチって呼ぶからハチでいいです」
「じゃあハチ君、俺は笹倉こっちが市川」
「イチでいい」
「はあ」









とりあえず居間に集まり状況説明をする事になった
だってこれこのままじゃ訳がわからない
笹倉というのがさっきドアを開けた奴らしい茶髪の男だ
市川という人は黒髪で、ちょっと無口で無愛想っぽい
因みに俺関係ないけどパーマかかってます、天パだけどな






「で、このイチが君を拾ってきた訳です」
「は!?」
「イチは元々拾い癖がある奴でな、昨日お前が公園に落ちてたからって拾ってきちゃったんだとよ」
「別に俺落ちてたわけじゃ…」
「ベンチの下に転がってたから落ちてたとおもった」
「まあそれで俺もこいつが人まで拾ってくるなんて思わなかったからびっくりしてんだけどさ」
「そりゃ、そうですよね」
「ところで君あんなところで寝てたってもしかして家出?」
「いえ、女の家から追い出されまして」
「…ヒモ?」
「そんな感じです」
「家はないの?」
「はあ」



なんとも情けないことですが




「笹倉」
「待て、早まるなよお前、今回ばかりは犬猫じゃねえんだからな!」
「拾ったモノは最後まで責任もちましょうっていったのはお前だ」
「だ、だけどそれとこれとじゃ」
「俺の部屋でいいから」
「こいつの都合もあるだろ!」
「ハチヤ、俺の部屋に住め」
「命令!?」










































こうして、何故か同居生活が始まってしまった











































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