santaclaus









































ドンッドンッドンとドアを叩く音がした
こんな時間に誰が尋ねてくるのだろう
もしかして迷子だろうか、とドアをあけた
















「既視感?」




そこには三太がいた

まさかまた会えるとは思っていなかった
何処へでも行けばいいといったのに、何故また此処へ来たの?






「・・・、ガキ、来てないか」
「ガキ?」
「この前、後夜祭に誘った」
「あの子ならあれ以来会っていないけど、どうかしたの?」
「…多分、迷子になってる」
「ここで?」

三太は静かに頷いた


「何時頃から森に入った?」
「昼過ぎには入ってるはず」
「これ、持って」
「何」
「非常食セットとランプ」

前回あの子がここに来た時は光を頼ってきたと言っていた
だから今回もきっと光を探していると思う
だけど昼間は光は届かない
暗くなってから大分経つ
それでも此処へこないと言う事は
きっとこの光が届かない所にいるのだろう

「五郎貸して」
「何するつもりだ」
「俺が探す、三太は近くを探して」
「いい、俺がいく」
「三太まで迷子になるよ」

そういうと三太は黙った
俺は積めるだけ五郎に荷物を乗せて森へ飛び出した






























光が見えるギリギリの場所に新しいランプを吊るしていく
序にその下に非常食セット(簡易)も置いておく
これを繰り返して、やっている内にどこかのランプに気がついて寄ってくるかもしれない
出来るところまでやって、また引き返す
そしてまた新しいランプを持って森へ出る、その繰り返し

どうか、この赤い灯をあの子が見つけますように
































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カイが出て行ってかなり経つ
一度戻ってきたが、荷物を取りに来ただけだった
カイのいない小屋はガランとしていた
薪の爆ぜる音しか聞こえない
ここで10年も一人で待っていたのだろうか
俺の事を

「今も待ってたのか」

自由にしてやったというのに

「今は俺が待ってんのか」





パチパチと、薪の爆ぜる音

ただ、それだけ












「待つのは、辛いな」


































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目が覚めたとき、其処は知らない場所だった




「あ、起きた?」
「お、れ…」
「まだ寝てるといいよ、大分冷えていたから、それとも何か食べる?」
だんだん頭が覚醒してくる、そしたら空腹が襲ってきた
ぐるるるる、と盛大に腹が鳴った

「シチュー、用意するよ」

クスクスと笑うその人はカイさんだった






























歩き回って、叫びまくって
それでも周りの景色は変わらなくって
寒くて、怖くて、どうしようもなくて
もう俺はここで死ぬのだと思った
その時微かに赤い光が見えた気がした
あの夜に見たような
とりあえず無我夢中でそこまで走って






























「ランプの下に袋を見つけて、中の毛布にくるまってた」
「なんでお前はあんなところにいるんだよ、此処と正反対じゃねえか」
「仕方ないだろ、迷ったんだから!」
「威張るんじゃねえよ」


起きたら、何故か三太もいて
どうやら三太は探しに来てくれていたようで
ちょっと申し訳ない


「大体行き先告げずに森になんて来るんじゃねえよ、
俺が気がつかなかったらお前助かってないぞ」
「そ、それは…反省してます」
「まあまあ、助かったんだからいいじゃない」

ああ、やっぱりカイさん優しい

「お前こいつに礼言っとけよ、お前探したの、こいつだから」
「そ、そうだったんですか!?すいません、ありがとうございます!!」
「いや、別に、いつもやってる事だしね、無事でよかったよ」
「もういいだろ」
「へ?」


急に三太が割って入ってきた

「おばさん心配してんぞ」
「あ!そういえば何も言って来てなかった!」
「もう心配かけんな」
「う、うん」
「行くぞ」
「ちょっ、待って、カイさんにお礼を言ってから」
「さっき言ったじゃねえか」
「いや、改めて言わないと」
「さっさとしろよ」

なんでこんなに急かすのか判らない
急に不機嫌になりやがって三太のやつ

「あの、カイさん、改めてありがとうございました」
「いえいえ、気をつけてね」
「はい!」






























「三太怒ってる?」
「別に」


怒ってんじゃん、すげーとげとげしいよ
まあ、仕方ないんだけどさ
帰ったらすげー怒られるんだろうな、うう


「帰り道判るの?」
「ああ」
「そっか、」



「そいえばさ、カイさんと仲直りした?」
「あ?」
「何か、喧嘩してる感じだったから」
「あいつとは何もない、もう余計な事すんな」
「何でそんなに強情なんだよ」
「お前こそ」
「俺は、何か、見ててもやもやするから…」
「はっ」
「な、何で笑った?」

しかも鼻で笑ったぞこいつ!

「ガキだな、と思って」
「馬鹿にすんなよ!」

そう反論したら三太は急に真面目な顔になってこちらをじっと見た


「悪い」


そんな真顔で言われてもなんか変な感じするんですけど


「な、なんだよ急に」
「いや」



それっきり三太は黙ってしまった
何か、急に不機嫌になったり、真顔になったり
今日の三太は何か変だ




































しばらくして、赤い光が見えた

そして森を抜けた



「早く帰ってやりな」
「うん、本当ごめん、ありがとう」
「気にすんな」


家に向かって歩き出した所で三太が動かない事に気がついた


「三太、帰らないの?」
「帰る」


三太はお隣さんだから、方向は一緒のはずなのに
何処か寄っていくのだろうか


「じゃあ俺先にいくから」
「気をつけて、もう森に入るなよ」
「入る時は三太を誘っていくよ」

一人で入って迷子になったら次こそやばそうだ




それからしばらく三太はこちらをずっと見ていた
俺は居た堪れなくなって家へと駆け出した
ちらりと振り返って見た三太はまだこちらを見ていた
















































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しばらく背中を見送った

あいつは気付くだろうか































「帰ろうか、五郎」














そう呟くと五郎は嬉しそうに擦り寄って


赤い灯に向かって歩き出した


























































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