ツンデレーション


























『ツンデレーション』

















ハラリハラリと雑誌をめくる音がする
この部屋には俺と奴の二人しかいない
しかし奴は俺と喋ろうともしない
ただただ雑誌に目を向けている
部屋を出て行こうかと思ったけれど出て行ったところで行く場所もない
だから俺はただただ何をするでもなくここにいる
しかしそろそろ暇になってきた





「八田、俺ちょっとでてくる」
「何で?どこいくの?」
「別にどこだっていいだろ」
「よくないから聞いてんじゃん、答えなよ」
「何だよそれ、別に暇だからコンビニ行くだけだよ」
「ただの暇つぶしなら行かなくていいじゃん」
「は?」






暇だから行くんじゃないか
お前が一緒にいても何も喋ろうとしてこないし
機嫌悪いのかとも思ったし
一人にしてあげたほうがいいのかと気を利かせたのに
何なんだ一体






「高畑、暇なら一緒に見る?」
「別にいいよ」
「てか見ろ」
「命令?」



別にそんな雑誌みたくないし
だけど八田は絨毯を叩いて俺を隣へと促す
ここで拒むとまた面倒だろうから仕方なく俺は八田の隣へと腰を下ろす






「これさー、高畑に似合いそうだよね」
「こんな高いの買えない」
「現実的になっちゃおしまいですよ、キャッチボールしなきゃ」
「めんどくさい」
「そうきたか」









めんどいと言ったにもかかわらず八田はこの服もいいよねー、等と続ける
服は正直気にしない、金もないし基本学校にしか行かないのだから必要ない
休日だってバイトしてないし、寮からもでないし
今持っているので事足りるのだ


そんな事を考えていたらふと右手に何かが触れた
それは指だった
俺の右手に重なるように乗せられていた
八田の左手、だ


八田は何事もないようにくだらない話を続けている
俺も何事もないようにそれを聞き流す
きっとこれは意識したら負けなのだ
だけどつい、ちらりと八田を見てしまった








そしたらばっちりと目が合ってしまった










「真っ赤」












と言われ
恥ずかしくなって顔を隠した
八田がかわいい、などとほざいている
うるさい、俺はかわいくなんかない















「放せよ」
「え?」
「手」
「嫌だよ、見えないからいいじゃん」
「よくない」








見えないからこそ意識してしまうんじゃないか











「もしかして意識しちゃう?」
「ざけんな」
「ふふ」














そしたら乗せるだけだった手が握られた

やめろとか、放せとか、散々言っても八田は放してくれなかった

ただ黙ったら八田も黙って雑誌をめくり続けたのでひとまずそこで落ち着くことにした




ハラリハラリと雑誌をめくる音がして
部屋には二人しかいないのに、何故か密着していて、手も握ってて
言葉は皆無で、だけど機嫌が悪い訳でもなくて
ちょっと恥ずかしい




















だけど、安心している俺はなんなんだろう
































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途中でごっちゃになっちゃいました


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