ツンデレーション



















俺は冴えない例えるならばただのクラスメイトJぐらいだ
成績も運動神経も外見も並以下のいてもいなくても問題ない奴
それが俺
そんな俺だが何故かクラス一、いや、校内一といっても過言ではない程の人気者と寮が同室だったりする
だからといって俺の評価が変わる訳もなく
毎日を胡乱に過ごしているのだが実は俺には秘密がある
秘密という程大袈裟なもんじゃないが、同室の男、校内一の人気者と大変親しいのだ
同室だから当たり前とかじゃない
友達とかでもない
所謂…
















『ツンデレーション』





















「高畑、聞いたか?」
「何が?」
「八田の新しい噂」
「今度は何だよ」
「バレー部の部長が手え出そうとしたんだって」
「まじ?」
「ああ、そしたら女子に制裁されたらしい」
「うへー、酷いね」
「あとなんもしらない一年生の女の子が告白したんだって」
「それはまた可哀相に」
「女子に呼び出しくらって結構酷くやられたみたいよ?」
「あいつら陰湿だもんな」
「八田も可哀相だよなー、あんな奴らがいるせいで彼女もろくにできなくて」
「まあねえ」
「お前も気をつけろよー」
「な、何で?」
「何でって、八田と同室だろ?」
「ああ、俺みたいな平凡人間は牽制対象にもされないから大丈夫だって、現に去年も何もなかったし」
「八田一人部屋だと思われてたもんなあ」
「そういう訳ですよ」









そういう訳なのだ
例の学校一の人気者であろう八田と俺は寮が同室
しかし俺が余りにも平凡すぎて存在すら霞むらしい
だから八田ファンの女子やら男子から目をつけられるなんて事はない
そもそもそういうのは顔がいい奴らが対象にされるのだ
この学校は元々男子校で、ちょっと前に共学になった
お陰で女子が少ない
でもその少ない女子の大半が八田のファンなのだ
奴らは集団で結束し、抜け駆けをしない事を誓い、そして自分達以外が八田に近付くのを拒むのだ
とんだ迷惑である
本人の意思なんて無関係なのだ
そこは八田も諦めているらしい
もっとも奴らも近付く奴を片っ端からという訳ではなく、下心がある奴のみに反応するらしいからまだいいのだと言うが





「高畑」

廊下から俺を呼ぶ声が聞こえた

「お、噂をすればじゃん」
「本当だ」


声の主は件の八田だった

「ちょっと行ってくるわ」
「おー」



八田と俺はクラスが違う
学校にいる時は特に用がないかぎり接触はしない
逆に接触してくる時は用があるという事だ
大方予想はつくけれども






「どうしたの」
「辞書貸して」
「勝手に持ってっていいよ」
「ん、あんがと、あと今日夜出るからさ、窓頼むな」
「はいはい」
「じゃ、よろしくなー」


そういうと八田はロッカーから辞書を取出し持っていった











「お帰り」
「おー」
「何だって?」
「単なる連絡事項だ」
「ふーん」






























その日の夜24時近くに八田は帰ってきた
表の入口は21時には閉められてしまう為それ以降に出入りする場合は窓からが主となる
幸にもベランダに掛かる大きな木がある為俺達の部屋から出入りは比較的楽だ





「ただいまー」
「お帰り、遅かったな」
「何、心配した?」
「するかよ」
「あら、つれない」









まあ、何時もより遅かったからもしかしたら何かあったのかもと思わなくもなかったが









「そいやお前バレー部部長と一年の女の子に告られたんだって?」
「うわ、もう広がってんの?」
「うん」
「噂って怖いわー」
「お前だもん、しょうがないだろ」
「な、な、ヤキモチやいた?」
「はい?」
「二人に嫉妬したかって聞いてんの」
「するか馬鹿」
「顔赤くなってますぜ」
「風邪だ」
「あっはっはっはっはっは!!!風邪だって!!」




八田は何故か爆笑しだした





「な、なんだ!!文句あるか!!」
「いいえー、すんげー可愛いなあと思っただけですよ」
「かっ、かっ!?」





可愛いだって!?
目がおかしいんじゃないか!?





「さて、じゃあ風邪の高畑の為にあったかくして寝ような」
「うわっ、ちょ、っ、おい!!」








ズルズルと布団に押し込まれた
それはいい、だか何で八田まで入ってくるんだ!






「八田!何だよ!」
「何って、人肌で温めてあげましょうっていう事ですよ」
「いいから!近いし!」
「何を今更」
「うっ」
「ったく高畑はもう本当に可愛いんだから」
「うるさい、可愛い言うな」
「だからそれが可愛いっちゅーに」







ひたすら可愛いを連呼する八田に返す言葉がでてこず
恥ずかしいやら疲れたやらな俺は大人しく眠る事にした
といっても目の前に八田の顔があるから当分眠れそうにないのだけれど
何度見たってこいつの顔は馴れない
それは凄くカッコイイからだ
学校一の人気者は伊達じゃない









「何々惚れた?」
「さっさと寝ろよ馬鹿」
「へいへい」



































大体毎日こんな感じで俺と八田は仲がいい
学校にいる時はあまり接触はしないけれど
寮に戻り、二人きりになると八田が馬鹿みたいに俺を構いだす



同室なんだから仲良くなるのは当たり前
しかし何故こんな風になったのかは謎
しつこかったのは八田
冗談だと思っていたのは俺
そして押され負けたのも俺


そしてこの関係は






「なーなー」
「な、なんだよ」
「俺達って付き合ってるんだよな?」
「し、知るか!!」
「否定はしないんだ」
「う、うるさい」
「ったく、本当に面白いなー高畑って」
























そういいながら手を握られた
恥ずかしくていやなのに

俺はそれを解くことが出来ないのだ
























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