Dash

























僕らはとまれない、止まらない














『Dash』

















「なーんかさ、最近つまんなくね」
「確かに」
「どっか行こうか」
「何処よ」
「適当」
「まあいいけど」







そんな適当な会話でプチ旅行に出かけることになった
金とカメラだけ持って適当に電車に乗る
とりあえず終点まで行く、ただそれだけ
たまには日常を忘れて
馬鹿みたいな事をする
ただ、それだけ











「なーんもないな」
「ですねえ」
「はい、ちーず」
「まあこれはこれでいい風景だけど」
「ちーずって言ってんだからこっち向けよ」
「嫌だよ、なんで撮るんだよ」
「だって風景だけだもん」
「風景がいいんじゃん」
「つまんないじゃん」
「感性の相違だね」
「牛とかいねーかな」
「ひつじがいい」
「動物園行ったが早くね?」
「あ、みかんだ」
「シカトかおい」








知らない土地で知らない風景を撮っていたらみかんの木の持ち主らしいおばあさんと会った
少し雑談をしてみかんをいただいた








「このみかんうめーな」
「うん」
「田舎の人ってさ、警戒心っていうのないよな」
「うん」
「出会う人皆にあいさつは当たり前だもんな」
「うん」
「ちょっと実家思い出した」
「俺も」
「都会ってやーね、心が荒んじゃって」
「うん」
「そういえばお前人物撮らないんじゃなかったの」
「撮りたいものを撮る、それが一番ですよ」
「ですよねー」
「よーし、競争しよう」
「は!?いきなり何?」
「この道の終わりまでダッシュ、はいスタート」
「うわ馬鹿!!俺まだみかん食ってるっつの!!」
「勝者にはみかんの種をプレゼント!」
「いらねー!!お前それ捨てろよ!」
「ゴミのポイ捨てはいけません」
「つか、はえーし!!」
「優勝は俺だ」
「それみかんの種お前のもんって事だぞ」
「あ、お前早く走って俺を追い抜け」
「あほか!つかこの道の終わりってどこだよ!」
「しらん」














金とカメラとみかんを持ってただ農道を走る馬鹿二人
いただいたみかんには種が入っていて
これを植えたらみかんが生るのだろうかと思いながら
終わりのない道をただ走る




終わりがないから僕らはとまれない、止まらない



































「おまっ、ここ、何処だよ」
「迷子だな」
「冷静に言うな」


























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