それはとてもキラキラとした眩しいもの
いつまでも色褪せない懐かしい思い出
二度と手に入らない場所
ああ、思い出はとても美しい
『En premier amour』
「学際?」
「ああ、久しぶりにいかね?」
「別にいいけどさ、部外者って行っていいんだっけ」
「土日開催だからいいだろ」
「適当だなおい」
「いいっしょ、卒業生だし、シゲちゃんまだいるだろうし」
「シゲかあ、あいつセクハラで訴えられたりしてねえかな」
「やべーよそれ、笑えない」
「だよな」
そんなこんなで母校の高校の学際にいくことになった
卒業してまだ3年しか経っていないが
もう二度と関係のない場所、やはり懐かしい
シゲは俺達の担任で、なんだかんだで3年間も同じだった
大人の男の匂いのする奴だった
女子の人気もあったが憧れる男もいただろう
事実かどうかは知らないが生徒と出来ているという噂もあった程で
あいつは誰にでも平等に優しいからしょうがないといえばしょうがないと思う
あれでは勘違いする輩も多かった事だろう
今でもそうなのだろうか
シゲにはお世話になったし、何より俺も勘違いをした中の一人だったから
だから人目でも見たいというのが実は本音
「うおー、結構盛大にやってんのね」
「焼きそば食いてえ」
「焼きそばはーっと、あ、あそこだ」
「あ」
見覚えある人物がいた
真っ先に目がいってしまうのはやはりまだ気になるからなのかなんなのか
「どした?」
「シゲいた、焼きそばの裏にいる」
「まじ?いこーぜっ!!」
そこにいるシゲは俺達が知っているシゲとまったく違いはない
だけど知らない学生と楽しそうに笑っている姿を見ると
もうあそこに居場所はないのだと、シゲと俺はもう関係ないのだと
そう、実感してしまう
ああ、相変わらず皆に優しいんだなアンタは
「シゲちゃーん!!」
「お、おい、生徒が見てるぞ」
「いいじゃん、俺達も生徒だったっつーの」
「つか目立つから、恥ずかしいから」
「うわ、何お前等久しぶりじゃねーか」
ああ、見つかってしまった
別に見つかりたくなかった訳ではないのだが
会いたいけど、会いたくなかった
見ているだけでよかったのに
でもやっぱり話がしたいのだ
なんだこれ何処の乙女だ俺は
「よーシゲちゃん、セクハラで捕まったりしてねえ?」
「なんだそりゃ」
「有塚といってたんだ、最近多いじゃん、だからシゲちゃんも大丈夫かなー?って」
「この真面目な俺の何処にそんな要素があるってんだお前等は」
「え、もしかして無自覚?」
「あーはいはい、で、どうしたんだ?」
「いや、なんか学祭あるって聞いたから遊びに来ただけ」
「じゃあどんどん遊んでけー、立花先生とか金田先生とかまだいるから挨拶してけよ」
「うわ、まだいるんだあの人達」
「というか有塚はさっきから喋ってないけどどうした?」
「え、いや、なんでもナイデス」
急にふられてびっくりした
っていうか話に入れなかったんだよ
緊張してんだよ
心臓バクバクいってんだよこっちは
ホントどこの乙女だ俺!!
「あ、俺食いもん買ってくるからさー、有塚、シゲちゃんの相手しててくんない?」
「え!?」
「普通逆だろうがお前は」
「頼むなー」
「お、おう」
これは、もしかすると、もしかするな
くっそう、悔しい
「3年ぶりか、ガキはちょっと見ないとすぐでかくなるな」
「ガキっていうな、シゲの癖に」
「お前はこ憎たらしいところは相変わらずだなあ」
「シゲっていくつ?」
「ん?いくつだったかな32ぐらいだと思うぞ」
「なんだよ、自分の歳も覚えてないのかよ」
「いや、なんか歳とか気にしてないからどうでもよくなってくるんだよなあ、お前いくつだっけ?」
「21」
「お、ピチピチだねえ」
「今時ピチピチて、おっさんじゃん」
「まあしょうがないよなー」
ああ、大丈夫だ、俺普通に喋れてる
でも駄目だ、シゲの声が聞けてこんなに嬉しいんだ
俺、こんなに好きだったんだ
なんで今になって気づいてしまったんだろう
「どうした?」
「え?」
「泣きそうな顔してるぞ」
「うそ」
「いや本当」
やばい、顔あげれない
しばらくうつむいているとふわりと、何かに包まれた
それはシゲの腕で
「なんか悩みがあったら言えよ、言えないなら胸ぐらい貸すから、泣け」
「せ、」
「せ?」
「セクハラだ」
「まじか」
あまりに緊張してしまって
冗談を言って逃げることしかできなかった
「あ、戻ってきたぞ」
「あー、シゲちゃん有塚泣かせんなよー」
「俺じゃねーぞー、」
「シゲが無理矢理セクハラしてきて…」
「ほらほら」
「うわっ、有塚汚ねぇぞ」
本当は泣いてないのだけれど
泣きそうにはなったけれど
そんな事実を知られたくはなくて
ましてや気を利かせてくれたあいつの事だから
告白して振られたとか思われたくなくて
精一杯俺はその場をやり過ごした
「あ、そいやシゲちゃん探されてたぞ」
「なんだよ、それを早く言えよお前は」
「ごめんごめん」
「じゃあな、ゆっくりしてけよ」
「あいよー」
しばしの沈黙
「違うからな」
「何が」
「泣いてねえからな」
「別に気にしねえから大丈夫だよ」
それは一体何に対しての気にしない、なのか
疑問に思ったけれども聞く事はできなかった
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