冬休みになって、実家に帰って、年が明けてまた寮に戻ってきた
仲間内で新年会やろう、という事になって友人の部屋へ行ってみればそこには何故か八田もいた
クラスの友人だったので、何処で繋がりがあったのだろうと思ったのだが
どうやら友人の友人が八田と同じクラスで仲がいいらしい
そんな感じのメンバーが5〜6人集まり、鍋をして、わいわい騒いで、ゲームをしたりしていた
「高畑やる?」
「いい」
「八田は?」
「俺もいいや」
「そ?じゃ4人でマリオカートな」
「おっけー、俺キノピオ」
「ずり、じゃあピーチだ」
「えー」
「ヨッシー、俺ヨッシー」
わいわいと皆は楽しそうだ
いや、別に俺が楽しくないわけではないのだが
皆で炬燵に入って(でかい炬燵がまたあるんだな)ぬくぬくしててとてもとてもいい気分なのだが
俺の隣には何故か八田がいて、ちょっと緊張したりしているのだ
学校ではそこまで親しい感じでは接していないし、友人達の前でどんな風に接していいのか実は判らない
というかそもそも八田に会ったのが久しぶりな訳で
久しぶりに会っても二人きりになる前にこの新年会に連れられたので
実はちゃんと挨拶をしていなかったりする
そんな事を悶々と考えながら炬燵の中に手を入れてテレビの画面を眺めていたら手に何かが当たった
まあ男が何人も密集しているのだから狭いよなあと思って手を出そうとしたら今度はギュッと掴まれた
思わずびくっとしてしまった
「どした?」
「や、静電気」
この場を冷静に切り抜けた俺に拍手を送りたい
隣を見ればニヤニヤとした笑顔があった
間違いなくこの手の主は八田だ
そう認識してしまったらヤバイ
俺はすぐ顔に出るのだと八田は言う、だからきっと俺の顔は今赤くなっていると思う
それを隠す為にとっさにテレビの方を向いた
そしたら炬燵の中の手は恋人繋ぎになって、しかも先ほどより強く握ってきた
やばい、かなりやばい
何がやばいってバレやしないかという緊張感と、八田に触れられているという緊張感
そして八田に触れられて嬉しいと感じている自分
凄く恥ずかしい、なのに俺はその手を握り返してしまった
ゴッ
「うお、いきなりどした八田」
「ごめん、ちょっとうとうとしてた」
「思いっきり額いったろ」
「びっくりした」
「寝るか?」
「いんや、だいじょぶ」
俺が握り返した瞬間八田が机に頭突きした
ざまあみろ、お前も少しは困るがいい
しばらくその状態が続き、部屋も手も体も暖まって俺はいつの間にかうとうとしていた
「高畑ー」
「ん」
「寝そう?」
「んー」
「八田くん、これどんな感じ」
「ほぼ寝てる」
「高畑子供みてー」
「しょーがないなー俺が部屋に運んであげようかな」
「あら、八田くん優しい」
「さすが!」
「よっ、人気者!」
「まあまあ、そんなに褒め称えんなよ」
「うぜー」
「よいしょ、うわ、高畑軽っ」
「気ぃつけてなー」
「おー」
ばたんっ
「高畑と八田て仲いいのか?」
「同室だし悪くはないでしょ」
「でも全然会話してなかったぜ」
「いや、あれはもう慣れ過ぎてって感じだと思うぞ俺は」
「そうか?」
「鍋の準備のときだって会話なくても意思の疎通とれてる感じだったし」
「あー確かに、何かぱっと見八田が気使ってんのかなーと思ってたけど高畑の方があわせてる感じだよな」
「じゃあそれなりに上手くやってんだな」
「何々、気になる?」
「だってよ、あの八田だぜ?中学の時色々あっただろ」
「確かに」
「今だって女子の鉄拳制裁が止まないのにさ、巻き込まれたら高畑可哀相じゃん」
「まあそれがないから何年も一緒なんだろあいつら」
「それはそうだけどさ、学校じゃ別に仲良く感じないからさ、
高畑の友人としては八田に上手く利用されてるだけだったら嫌だなー、とか思ったりする訳ですよ」
「それはないでしょ、八田そんな事しねーし」
「うん、それは今日で分かった」
「学校じゃ特別親しくしない方が平和に過ごせるっちゃ過ごせるだろうしな」
「だな、まったく女ってのは怖いよな」
「何お前等嫌な思い出でもあんの」
「ふふっ聞くなよそんな事」
「そうだぞ」
「ごめん」
くすぐったい
なんだろう
「ん」
「あ、起きた?」
「ふあ?」
目をあけると目の前に人の顔
暫くしてそれが八田の顔だと気がついた
「ちかい」
「えー、いいじゃん、久しぶりだし」
そういって顔にキスをしてきた
ああ、くすぐったかった理由はこれか
って納得している場合か
「何してんの」
「あ、照れてる」
「うるせー、やめろよー」
「嫌だ、高畑があんな事してくるから我慢きかなくなりました」
「あんな事?」
「恋人繋ぎ」
「あ、あれはお前が先にっ!!」
「先にしたけどまさかあの状況で握り返してくれるとは思わなかったもの、思わず興奮してしまいましたもの」
「うう」
「新年早々愛されてるな、って実感した」
「う」
なんだその歯の浮くような台詞、恥ずかしい奴だ
「そいえば新年会は?」
「お開きになったよ、高畑寝ちゃったから運んだんだけど、戻ってきてもまだ寝てるんだもの」
「悪い」
「いいよ別に」
「あ、」
「え、何」
「あけましておめでとう、」
「今更!?」
「言ってなかったから」
「そっか、じゃ、俺も、あけましておめでとうございます、今年も宜しくお願いします」
「こちらこそ、お願いします」
改まって新年の挨拶とか何か少し恥ずかしかったけど
何故か八田も照れている感じだったのでよしとする
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今年も甘くて仲良しなツンデレーション
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