「今日、彼女来るんだ」
『tear』
「へぇ、だから?」
「いや、夕方には帰れ、と俺はそう言いたい」
「呼んだのはお前だろ、と俺は言いたい」
そうなのだ休みだから昼まで寝てるつもりが
いきなり電話で起こされたのだ
暇だから遊びに来い、と
なのに帰れってお前勝手すぎじゃね?
「てかお前彼女いたの?」
「いたのよこれが、地元なんだけど」
「遠距離ってやつか」
「まあ中距離だな」
何だよ彼女いたのか
仲間だと思ってたのにチキショウめ
「彼女、かわいい?」
「ちょーかわいい」
「妬けるねえ」
「ほいほい、もう来ちゃうから帰った帰った」
「っとに自分勝手な奴だな」
そこまでいわれちゃしょうがないので俺は腰をあげた
ピンポーン
「わっ!!もう来ちゃったじゃん!!お前ちょっと待ってろ」
「へーい」
どうせなら紹介してくれい
そう思った
しかし待てども彼女は入ってこない
何かあったんだろうか
もしかしたら熱い抱擁でもしているんだろうか
聞き耳を立てたら声が聞こえた
「だからもう疲れたの!」
「疲れたってそんな事…」
「あたしにとってはそんな事じゃないの」
「とりあえず入れよ」
「いい、もう話しは済んだから」
「ちょっ待てよ!!」
パシーン
とっても痛そうな音がした
「もうあたしに話し掛けないで」
バタン
えらい修羅場に居合わせてしまったようだ
察するに彼女にフラれたんだろうそれは確実なんだろう
こんな時友人としてどうやって慰めたらいいんだろうか
黙って帰ってやった方がいいんだろうか
とりあえず何も聞かなかった事にして待っていればいいのだろうか
もんもんとしていたらあいつが戻ってきた
「あれ彼女はいいのか?」
咄嗟にこんな事をいってしまった
もろ確信じゃん何言ってんの俺!
相当俺はテンパっているようだ
「うん、…別れた」
しかし意外にもこいつは落ち着いていた
「え…別れたって」
「うん、別れたを告げにだけ来たみたいあいつ」
怖いぐらいに落ち着いている
さっきまでの勢いはどうしたっていうんだ
それに…
「お前笑うな」
「え?」
「楽しくもないのに笑うな、悲しいんだろ?納得してないんだろ?だったら泣けばいいし憤れよ!!」
何故か言葉がとまらなかった
「俺の前で無理すんなよ、かっこつけようとするなよ!!!」
途端に目の前の男は泣き出した
俺はそれを隠すかのように奴を抱きしめた
それからどのぐらい経っただろうか
「なあ」
「なんだよ」
口がちょうど耳元にあるので少しくすぐったい
「何でお前まで泣いてんだよ」
言われて気がついた
俺は泣いていた
「な、泣いてねぇよ!!」
「声が震えてるぞ」
「うるせえ!!」
俺は堪らなくなってさらにきつく抱きしめた
泣き顔を見られたくなかったのと
何故か離れたくなかったから
そしたらあいつも抱き返してきて
まるで子供をあやすようにしてくれて
悲しいのは俺じゃないのに
泣きたいのは俺じゃないのに
そんな優しさに当てられて
俺は更に泣いた
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