親父が突然人を拾ってきた
それも執事
『mousou shituji』
「何で?」
リビングの扉を開けた瞬間そんな言葉が出た
いやだって、だってあんた
知らない人間が親と一緒に食卓囲んでるんだよ
しかも執事の格好してるんだよ
え、何一体、どっきり?どっきりなのか?なんのどっきりだよ!!
「あら、おかえりなさい」
「…た、ただいま」
「お前も手洗って食べなさい」
「あ、ああ」
なんとなくこの執事が何者なのか聞けないまま
俺は席につきご飯を食べ始めた
しかし、さっきから一言も発していないこの執事
もしかして俺にしか見えてないとかいうわけじゃないよな?
そんな事をもんもんと考えていたらふいに親父が口を開いた
「あ、そういえば志郎にはまだ紹介してなかったな」
「へ」
「こちら、執事の如月さんだ今日から家に住むから仲良くするんだぞ」
「は?」
「パパったら路頭に迷ってたからって拾ってきちゃったんですって」
「え、拾っ、えええ!!?」
「如月と申します、なんなりとお申し付けください」
「申しつけねえよ!!つかなんで鼻血だしてんだよ!!」
改めてみた執事、いや如月の鼻からは血が垂れていた
あの、この人けっこうかっこいい部類寄りの人なんだと思うんだけど
そんな人が鼻血垂らしてるのってなんか、シュールだ…
っていうか今の会話の何処にそんな要素があったよ
「すいません、仲良くする方法を色々考えていたら興奮してしまって」
「興奮ってなんだよ興奮って!!」
「如月さんには主にお前の面倒を見てもらおうと思うから」
「部屋は同じでいいわよね?他に部屋なんてないし」
「うぇ、まじすか…」
「すいません、私が転がり込んだばかりに志郎様に不快な思いをさせてしまって…」
「いや、あの、様っていうのやめてください」
「執事として主を立てるのは当然のことです」
「同じ部屋でいいんで、様は勘弁してください」
自分よりも年上の人間に様なんてつけられたらたまったもんじゃない
そんな生活を送ってきた人間じゃないんだ俺は
「それでは志郎さん、早速お部屋に行きましょう」
「え、何で?まだ飯食ってるし」
「いや、一刻も早く私達の仲を深めましょう!」
「そうよね、一緒に暮らすんだから仲良くしなきゃだものね」
「志郎、我侭いうなよ!」
「え、ちょっ…」
「さあさあさあ!!」
「わかった、わかったからひっぱるなってば!!」
バタン
「あの二人仲良くできそうね、パパ」
「そうだな、ママ」
「ちょっと、如月さん、いい加減に離してくれません?」
そういうと如月はピタリと止まった
しかし手を離してはくれなかった
何事かと思い顔を覗いてみると
なぜか鼻血をだしていた
「あ、あの、アンタ鼻血が出やすい体質なの?」
「いえ、普段は大丈夫なのですが興奮すると…」
「興奮!?何だよ何に興奮してんだよ!!」
「志郎さんの敬語に…」
「は!?」
なんだ、何なんだこいつは
何故か俺の中の警報が鳴っている気がする
「実は私、志郎さんみたいな殿方を頭の中で汚すのが堪らなく快感なのです」
「!!!?」
「貴方はまさに私の理想の殿方です、さっきから妄想が暴走して…」
「おおおおおおお」
おとーさーーーん!おかーーさーーーーーん!!
へ、変態がっ!!すげえ変態がここにっ!!
っていうかこんな変態拾ってくんなよバカ親父!!!
ちょっ、この人怖っ!!息荒いし!!
た、助けて!!
「でも大丈夫です、実行はしませんので、精々私の頭の中でよく啼いて下さいね」
「何が大丈夫なの?お前の頭が大丈夫なの?」
「一応大学は出でいますが」
「何で執事なんかやってんだよ」
「それは…話せば長いのですが…」
「じゃいい」
俺はもう疲れてしまった
いきなり執事だとかいってしかも変態だとかいって
こんな奴の話なんてわざわざ聞いてやることない
っていうかむしろ聞きたくない
今日はもう寝よう、まだ全然早い時間だけど寝よう
起きたら全部嘘でした、とかなってねえかな
自分の部屋に入って布団にもぐり込む
するとなにやら視線を感じた
ああ、そういえばいるんだっけ
いっその事廊下とかでいいじゃん
「あの、如月さん、布団はかーさんにいってもらってきてっえぇぇぇえ!!?」
布団から顔を出して如月の顔を見たら
こいつまた鼻血だしてやがりました
何こいつ、何こいつ!!
「すいません、そうやっている姿を見ると布団を剥いで無理矢理押さえつけて手足を拘束してからゆっくりと…」
「ねえ本当に頼むからやめて!!お願いだからやめて下さい!!」
「失礼しました、しかしこれは私の性ですので」
「百万歩譲ったとして妄想はいい、いやよくないけどね、でも口に出すのはやめて下さい、まじで」
「…了解しました、なるべく気をつけたいと思います」
「鼻血出しながらじゃ説得力ないんですけど!!」
もう本当に何なんだこいつは
っていうかなんで親父はこんな奴を拾ってきたんだ
こんな、こんなど変態を!!
このままじゃ絶対俺ヤられるって、やばいって!
肉体的にじゃなくて精神的に犯されるよ!!
「志郎さん」
「な、なんだよ」
「一緒に布団に入って寝させていただいてもよろしいでしょうか?」
え?何こいつ
執事だろ?
っていうか俺さっき布団もらってこいっつったよな?
「ざけんな変態!!!」
その後俺の必死の説得により
結局如月は廊下で生活する事になった
俺の部屋に鍵が付いたことは言うまでもない
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