最近寒くなってきました
『クリスマス』
ようやく冬らしい寒さになってきた
それもそうだ今日はクリスマスなんだから
例によって彼女はいないので今年のクリスマスもバイトな俺
別に家族で祝うような歳でもないからいいんだけど
「増田ー、これ持ってけ」
ラストまで頑張って、さて帰ろうかと思ったら社員に呼ばれた
「なんすか?」
「売れ残りのケーキ」
「はあ、ありがとうございます」
駅に向かう途中、携帯を見たら着信が入っていたのでかけ直すことにした
ちなみに親からだ
「もしもし」
『あんた今日帰ってくるの?』
「そのつもりだけど」
『久々にお父さんと二人きりになりたいから帰ってこなくていいわよ』
「は?」
『じゃあね』
プツッ
何だよ帰ってこなくていいとか普通言うか?
つかケーキもあるしどうすんだよ
ホテルにいく金なんてねえぞ
そこでふとあいつの存在を思い出した
そうだ、あいつがいたじゃないか
休みに入ってから会ってなかったから半ば忘れかけてたよ
そして俺は小林宅へと向かったのだ
ピンポーン
ガチャ
「よう」
バタンッ
「は!?なにそれ!!」
即効でドア閉められましたが
何だ!女でもいるんか!!小林のくせに!!
ガチャ
「本物だ…」
「何だそりゃ」
偽者でも来た事があるのかよ
「どーでもいいけど上がっていい?」
「あ?ああ」
「ついでに泊まっていい?」
「え!!?」
「今日親に帰ってくんなって言われてさ、どうせお前も彼女いねーだろ?」
「あ、うん、いいけど」
なんだかさっきから歯切れが悪い
何だ、何かやましい事でもあるのか?
「あ、そいやこれやる」
「何?」
「ケーキ、バイト先で貰った」
「増田!そんなに俺の事…」
そういって小林は思い切り抱き着いてきた
え、お前の事なんか好きじゃねえよ?
宇野の家のが近かったら確実にそっちいってるぜ?
まああいつは彼女もちだから今日は無理かもしれないけど
「離れろ、邪魔」
「増田ったら照れ屋さんなんだから」
「違うから!何か勘違いしてるみたいだけど違うから!!」
がっしりしがみ付いている小林をどうにか引き剥がし、俺はやっと家に入ることができた
「お前が来るなんて思ってもなかったから何もないけど」
「いいよ別に、コーヒーぐらいは欲しいけど」
「そんぐらいはあるべ、ちょっと待っててな」
酒が欲しかったけどこいつは飲めないからどうせストックもないだろう
まあケーキがあるからコーヒーでいいだろう、と思ったわけで
そのコーヒーが届くのを俺はこたつに入りながら待った
「はいお待ち」
「さんきゅ」
特に話す事もないのでテレビを見ながらコーヒーをすすっていたら
何やら視線を感じた
まあ視線の主は一人しかいないのだが
「何?ケーキ食うの?」
「いや、うん、食べたいけど…そうじゃなくて」
「何だよ」
「増田とさ、クリスマスを過ごすなんて思ってもみなかったから」
「悪かったな」
「だからそうじゃないんだってば」
「は?」
「来年も一緒に過ごしたいっての」
「…バーカ」
男にこんな事言われても気持ち悪いだけなのに
嬉しいなんて思うはずないのに
「ケーキ、食うか」
「うん」
小林のとても嬉しそうで
俺はなんだか申し訳ない気持ちになってしまった
----------
text
|
|