小林と増田






















珍しくバイトが昼までで
さて帰るか、と外を見たら



一面銀世界でした。










『雪』










「ってか電車動いてねーじゃん」

こんなに雪が降るなんて聞いてない
いや、出かけ際に母親が今日は雪が降るだとか言っていた気もしないでもないが
こんなに降るだなんて思ってねえよ、なんだこれ
まあしょうがない、せっかく昼上がりなのに家に帰れないという事は
小林んとこに行くしかないな、いるかなあいつ























ガチャ




「あれ、何で増田?」
「ちょっと家に帰れなくなった、置いてくれ」
「いいけどって外白っ!!」

お前今頃気づいたのか

「お前寝てたろ」
「うん、てかすげー積もってるな」
「な、電車止まっちゃってるもん」
「なあなあ、遊ばね?」
「はあ?」
「雪ダルマ!雪合戦!!カマクラ!!」
「カマクラは無理だと思う」







という事で近くの公園で遊ぶことになった
子供がいるかと思ったが意外とおらず、公園は俺達二人だけだった






「さみー、つか誰もいねー」
「ここって結構穴場なんだ、団地もないしね」
「ふーん」




人影もなく、車も通らない、俺達だけがここに存在しているような、変な錯覚
ボケッとしていたらベシャッと顔に雪が当たった

「増田くん討ち取ったり〜」
「っのやろ!!」

そこからしばしの間雪合戦。


































気がつけば二人共雪まみれ





「小林、ちょっ、もうギブ」
「うん、俺も疲れた、あそこで休もう」

小林が指した先は滑り台の下だった
だけどいい歳した男二人が入り込むのはやはりきついようで
結局足は雪の中だった




「小林、狭いぞ」
「しょうがないじゃん、我慢しろよ」
「ってか逆にくっついてくんなお前は!!」
「えー、だって寒いし」


離そうとしても結局狭いので仕方なくそのままくっついてることにした

しんしんと雪が降っている

物音一つしない、本当に世界に俺らだけしかいない





「もうすぐさー、進級だな」
「お前進級できるのか」
「失礼な」
「あれだな、そろそろ就職とか考えねえといけない時期だな」
「ああ」
「なんだよ」
「ん?」
「何かいいたい事あるんじゃねーの?」
「や、増田を好きになってもう一年ぐらい経つんだなーって」
「んん?あれ、お前それおかしいだろ、俺告白されたの先月ぐらいじゃね?」
「え、それ以前に好きかもって言ってなかったっけ?」
「だってそれかも、だろ、好き、じゃないだろ」
「いや、今思うとあの時もう好きだったね俺」
「そうですか」


こんな風に小林はさらっと言うのであんまり意識したことはないが
俺はこいつに告白をされていたのだ、しかも俺は返事をしていない
もしかして俺って酷い奴?



「お前さ、返事とか聞きたい?」
「え、そりゃ聞きたいけど別にいいよ」
「何で?」
「だって解るもん」
「へ?そう?」
「うん、真面目に考えてないってのがね」
「んな事ねーよ!」
「へー、そんな事いっちゃうんだー、増田くん」
「な、何だよ」

気のせいか少しづつ小林の顔が近くなっている気がする

「普通ちゃんと考えてたら男に恋愛対象にされたらそいつの家とか無防備に泊まりにこないっしょ」
「そ、そう?」
「襲われても文句いえないよ」
「襲うっておまっ!!つか顔近い!!」
「恋愛対象にされるってこういうことだよ、増田」
「何、」



言葉を最後まで言うことが出来なかった
俺はキスをされている
と、理解するまでにはしばらくかかった










「わかった?」



小林が何かを聞いてきたが頭に全然入ってこない
何が起こったのか、分かっているのだが解っていない


「もっかいしちゃおうかな」
「わわわわっ!!!おまっ、やめろ!!」
「ぶはっ、真っ赤になってやんの」
「なっなななな」
「安心しなよ、もう何もしないから」
「し、信用するぞ、裏切るなよな!!」
「はいはい、つかそこで信用しちゃうんだもんなあ」
「何か言ったか!?」
「言ってないよ、ほら雪だるま作ろう」
「よし!作ろう!!負けねえからな!!」
「雪だるまって勝負するもんだっけ」
「大きさを競うんだよ」
「えー、どうせなら頭と胴体共同して作ろうよ、愛の共同作業ってやつ?」
「断固拒否します」
「つれないねー」











びっくりした
したけど、小林はいつもと変わらない
だから俺もいつもと変わらない、だってむかつくじゃないか、俺だけ焦ってたって
だけどそんなに平静なんてすぐに保てない、内心どっきどきだ
でも絶対悟られるものか
そう思って一心不乱に雪だるまを作った









しかしせっかく作った雪だるまも、二つ並んだ姿を見た小林が「恋人みたい」と言ったので蹴り壊すことになる。





































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少しは危機感を持ってほしいものです




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