小林と増田




















年末の、今年ももう終わりだというその日に小林がやってきた







『年の締めに』














「何でお前がいんのさ」
「え、遊びにきたらまだ寝てるからって部屋に通された」
「じゃなくて、今日大晦日じゃん」
「うん、暇だし」
「お前実家帰ったんじゃねえのか?」
「いんや?俺そんな事言った?」





…確かに、帰るとは一言も聞いていないのだが
一人暮らししてる学生なんだから年末年始ぐらいは帰省すると思うだろう




「メールも電話もしたんだけど全然出ないからきちゃった」
「まあ、いいけどさ、泊まるんだろ?」
「え、いいの?」
「んなわざわざ年末に追い返したりしねえよ、どうせ暇だし」
「ありがと増田!!」
「はいはいどうも」



どうせ小林の事だから暖房ケチって乗り込んできたんだと思うのだが
そういえば去年の年末年始も小林といたなあ
今年もかよ、と思ったがもしかしたらこんな事していられるのも今年が最後かもしれない
なんてぼんやり思ったりもする


















それから小林は我が家で一緒に食卓を囲み(すき焼きだった)紅白も見終わって
気がつけばそろそろ年越しそばかしら、という時刻になっていた






「ほれ、年越しそば」
「あ、あんがと」





ずるずるす、と蕎麦をすすりながら適当なテレビ番組を見る
皆テレビの中で年越しに向けて盛り上がっている
年が変わったって、昨日と今日で何かが違うわけでもないのに








「増田」
「ん?」
「来年はさ、沢山遊ぼうな」
「いや、就活しろよ」
「あー、ききたくないー」
「おい」


「だって、増田との思い出沢山作っときたいんだよ」
「気持ち悪いこと言うなよ」
「もし俺が明日死んだりしたら不完全燃焼じゃん、悔い残るじゃん」
「や、お前が何後悔するとか判らんけども、そんなん毎日後悔せずに過ごせばいいじゃん」
「それが出来てれば今こうなってないよ」
「は?」



たまに小林は訳がわからない
一人でむつかしいこと考えて、それを理解してほしいわけでもなくて
一人で全てを判ったふりをしている
そこがとてもムカつく




「あ、あと30秒で年越しだって」
「え、まじで?」
「じゃあ増田、よいお年を」
「え、あ、うん、よいお年を」




これってこんなギリギリに言うものだったか?
































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年越しの話を書こうとして何故か年末の話になってしまいました
新年はまた今度にします




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