小林と増田



























「すまん泊めてくれ」

「は?」














『台風』



















台風が近付いているのは知っていた
だけどバイトがあったから普通に出掛けた
ラストまでやって駅へ向かったら電車が止まっていた
しょうがないので小林の家に来た


そんな感じで今に至る






駅から小林ん家まではそんなに遠くないし
都合のいい事に明日は祝日だし











「はあ…まあいいけど、今絶賛雨漏り中よ?」
「いいよそんぐらい、雨ん中いるよりは」
「んじゃまあ上がりな」
「さんきゅ」











小林ん家は4畳半しかない
風呂トイレはかろうじて付いているが築20年だという
至る所ぼろいのは仕方がない
その分家賃も安いしな







しかし入ってみると予想外に被害は大きかった















「だからいったろ絶賛雨漏り中だって」















言葉をなくした俺に小林が呆れたようにいった







「いや、ここまでとは…」









さすがに思わなかった

だって半分が侵食されているのである
床にはコップ、鍋、ごみ箱が数々設置されていた





「まあ布団の上は大丈夫だから」
「かろうじてな」






まあ無理矢理押しかけたのだから文句は言えない













「まあ…どうするよ」
「は?」
「こんな時間だしもう寝るか?それとも何か食う?」






バイト終わりで腹へってるだろ、と小林は言ってくれたがそんなに減っているわけではないので断った

こんな時間に食べたら逆に眠れなくなってしまう









「何か…せっかくお前が泊まりに来てくれたのにもう寝ちゃうのは勿体ないなあ…」
「別に好きで泊まりに来たわけじゃないからな」
「わかってるけどさー」








といいながらもぶつぶつ何かを言っている小林を無視して俺は布団の上に腰を下ろした



ちょっとしてから小林も座った
異様にくっついているのは気のせいだろうか…

































その時外が光った





と思った瞬間凄い轟音










そして真っ暗闇になった












もしかしなくともこれは雷が落ちて停電したのだろうか











「ま、増田大丈夫か…」
「俺は別に平気だけど、何お前暗いの駄目なの?」
「や、暗いの自体は大丈夫だけどお前と一緒ってのが…」












そこまでいうと小林は黙ってしまった
おい何だそれは最後まで言えよ
俺と一緒だとなんか不都合でもあるのかよ!!
























ピチョン









「冷たっ!!」
「え、何どうした?」
「雨漏り!もっとそっちいけよ!!」
「そう言われてももう壁だし」
「うわっちょ、まじ冷たい!!どうにかしろ!!」
「んー…しょうがないなあ」






















小林はそう言うと俺を背後から引っ張った














「これで大丈夫だろう」





















いや大丈夫じゃない
















何だこの体勢は俺が小林に抱きしめられてるじゃないか
しかも首に息がかかってくすぐったい…







「待てよなんだこの体勢は!!」
「一番場所取らないかなって思って」
「そりゃそうかもだけどくっつくなって!!」
「だってくっつかないと水に当たるでしょうが」
「う…」












それはそうなんだが納得したくない
そもそも俺はそんなに華奢だとかいうんじゃないんだ

だから男に抱きしめられるのはちょっと情けない気持ちになってくる






































なのにちょっと安心してる俺は何なんだ





























俺が力を抜いたのが分かったのか小林が力を込めた

































「小林」

「んー?」

「あんまくっつくな」

「はいはい」

































しかし小林の力が緩む事はなく






























何故か俺も咎める事が出来なかった































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