03

















「じゃあこれが通貨な、金貨銀貨銅貨があるが使っても銀貨までだと思う」

「はあ」


「城下は広いから迷子になるなよ」
「路地裏とかは結構危険だから気をつけろ」
「まあそういう所にいる可能性の方が高いがな」


どうしろっていうんだ


「じゃ、まあたっしゃでな」




「はあ」



「いってらっしゃい」
「無事を祈る」














「いってきます…」

























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そんなこんなで俺は今城下へと向かっている

何故か、それは俺が嫁だかららしい
シドの話しぶりを聞いていると嫁というより使いっ走りのような気がするが
要約すると、


旦那さんが行方不明です、お嫁さんは旦那さんを探しましょう


こんな感じだろう。












そうなのだ、俺は嫁になる事を承諾してしまった
だって戻れる可能性を考えたらそっちの方がいいだろう
嫁っていうのがどこまでするのか、という疑問がよぎったが今は詳しく考えないでおく
っていうか考えたくないというのが本音

まあこの世界や国を知るのは直に触れるのが一番、という考えのもと
城下探索も兼ねて街へ旦那を探しに行け、という事らしい
しかし来る時にも思ったがここの街は半端なくでかいと思う
城と城下併せて一個の国らしいからそうなのかとも思うが
そんなところに一人で行かせるのか、と抗議をした所









「おにーしゃん、はやく!」










こんなちみっこをつけてきましたあの人達。









本当に見つける気はあるのだろうか
別に見つかんなくてもいいんじゃないか?
だって探せっていわれても写真も何もないんだから顔分かんないし
名前だって教えて貰っていない、いや、聞かない俺も俺なんだが
特に何も考えてなくてはいはいいってたからこんな事になってしまったのだ
まあちみっこが顔知っているから一緒に行けって言ったんだろうが
にしてもこんな子供と一緒だなんて不安だ。















「ところでちみっこ、お前名前なんていうんだ?」
「ちび!」
「は?」
「おにーやんがちびってよぶからこーちゃんもそれでいい!!」
「はあ、どうも」



こいつは一体どんな扱いを受けているんだろうか
ちなみにこーちゃんというのは俺の事らしい
ヒロキ、だと明らかにこの国の人間の名前とは違うから
怪しまれない為に漢字を一字取ってコウ、と名乗るように言われたのだ
服もこちらの服をいただいてしまった
学生服だと目立つから仕方ないっちゃ仕方ない。





「で、ちみっこ、何処へ行くんだ?」
「やどやしゃん!!」
「宿?」
「おれんじじゅーしゅくれるの!!」
「は?」



さっぱりわけが判らない、が、下手に逸れて迷子にでもなったら困るので
黙ってついていくことにした


















着いた場所は宿屋で、どうやら地下に飲み屋があるようだ
部屋を取ったあと、ちびが飲み屋にいくというのでついていった







飲み屋はカウンターと席とちっさいステージみたいなのがあって
多分バーとかな感じなんだと思う
何しろ俺はまだ未成年なので、こういう店には入ったことないのだ
ちびは入るなりカウンターに走っていった




「おいコラ!!」
「おにーしゃんもこっちー」






子供の相手は疲れる
しょうがないので隣に座る







「お、ちびちゃんじゃねーか、久しぶりだなあおい」
「じゅーしゅください!!」
「ははっ、ほらよ」
「おれんじー!!!」




なるほど、こういうことか
ちびは以前にもここに来たことがあって、オレンジジュースを飲んだって事か
おいしそうに飲むその姿にちょっと和んでしまった
そしたら俺の前にいきなりゴトッとジョッキが置かれた
何、なんですかこのジョッキ、泡があるんですけど、コーラ、とかじゃない…よね?




「あ、あの」
「とりあえず一杯飲みなよにぃちゃん」
「え、でもこれってお酒ですよね…?」
「なんだぁにいちゃんいい歳して酒も飲めねえのか?」
「いや、俺まだ未成年なんで」
「そうは見えねえが…いくつだ?」
「え、18ですけど…」
「なんだ、もう立派な成人じゃねえか、飲んどけ飲んどけ」
「え、あ、はあ…」








そうか、ここでは成人が早いのか
でもそんな事言われても酒なんて飲んだ事ないんですけど
俺はこれでも至極真面目で健全な高校生なんですけど
しかし親父がしきりに勧めてくるのでしょうがなく一口飲んだ
意外と上手かった、これなら飲めそう















「ところでにぃちゃんどこから来たんだい?」
「え?」
「見ない顔だからな、旅のもんかなんかだろ?」
「あー、ええと、まあ、そんな感じです」
「渡ってきたのかい?」
「渡って?うーん、まあ一応」
「へえ、どこの大陸にいたんだ?」
「え、大陸!?えーと、東の方とかユーラシアとか?」
「聞いたことねえな」





それはそうですとも、適当に言ってるだけだから
しかし俺の世界ではちゃんとある大陸、のはず
けどいい加減出任せもきつくなってきたのでちみっこに助けを求めようと隣を見た
そしたらちみっこ寝てました






「おいちみっこ、起きろ」
「んーにーしゃん」
「こら、お前のために来てやってんだぞ」
「おねむー」
「あっ、こら」




限界だったらしく、ちみっこは俺にしがみついて眠ってしまった
まるでコアラのようだ




「にぃちゃんよっぽどちびに好かれてんだな」
「そーすか?」
「こいつ見かけによらずしっかりしてんだよ」
「うっそお」
「家がどこか知らねえが一人で来て金も払って一人で帰っていくんだからな、しっかりしてるだろう」
「あー、まあ」
「レンの側意外で寝る事なんてないからな、相当好かれてるよあんた」
「はあ」




っていうかレンって誰だ?






「親父ー、酒くれーい」







突然横に男が座って来るなりこういった
何、誰?





「おー、レンじゃねえか」
「どもー、なーに若い子口説いちゃってんの?」
「お前じゃねえんだからよ」
「失礼だなー、俺男にはまだ手ぇ出してないのよ?一応」
「これから出す気なんじゃねぇか」
「いい子がいたらねー」




…どうやらこの男が件のレンという男らしい
どう見ても遊び人という風にしか見えない…が
あんまりいやらしい感じはしない、ついでに歳も若く見える






「へー、ちびがこんなに懐いてんのって珍しいな」
「へ?」
「最近ずっとほったらかしてたからそろそろ会ってやろうかなーと思ってきたけど、別に必要なかったな」
「いやいやいや」




っていうか何こいつ、馴れ馴れしくないか?
いやしかここに来てから周りの奴はこんなんばっかだな
唯一邪険にされたのはあの武人の奴だけだ
そういうお国柄なのだろうか






「名前」
「へ?」
「あんた名前なんつーの?」
「あ、ひ…じゃなくてコウ、です」
「ふーん、俺レン、よろしくな」
「あ、うん、よろしく」
「じゃあ初めましての乾杯すっか?」

















































その後、何故か飲み屋の客全員と杯を酌み交わした俺は
慣れない酒に飲まれてしまったらしい
というのもこの後のことをまったく俺は覚えていないからだ


























酒は飲んでも飲まれるな













朝、酷く痛む頭にそんな言葉が浮かんだ
















































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