気づいたら朝だった
起き上がると頭が激しく痛んだ
そして何故か真っ裸だった
「なんで?」
ちょっと落ち着いて考えてみよう
ええと、昨日はレンって奴に会って、酒飲んで
酒飲んで…
そこから全然覚えてないぞ?
いつの間に部屋にきたんだ俺は
っていうか何で全裸?
ガチャ
「おー、起きたか朝食は地下でだぞ」
そこにはレンがいた
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「昨日はすんませんでした…」
「いーって事よ」
地下のバーにて朝食を取りつつ記憶の無い部分の説明をしてもらった
どうやら俺は酒に飲まれて潰れてしまったらしい
それを部屋まで運んでくれたのがレンなのだそうだ
初対面で恥を晒してしまった、恥ずかしいやら申し訳ないやら
しかし腑に落ちないことがある
「何で俺全裸だったんですか?」
「え?ああ、ちょっと味見しようかなーと思ったの」
「は?」
「だけどぐでんぐでんに酔ってて勃ちやしねえの、だから何もしてないよ」
「はあ!?」
そんな事笑って言わないでほしい
っていうか味見って、ええ?
何、そういう趣味がおありの人なんですか?
お、俺下手したらお嫁にいけない身体になってた!?
「にいちゃん気をつけな、こいつは男も女もいけるからな」
「そうみたいですね、気をつけます」
出来ればもっと早くいってほしかったけどな
「あ、そういえばちみっこはどうしました?」
仮にも皇子様をほったらかしにしていたけど大丈夫だろうか?
「ああ、ちびならまだ部屋で寝てるぜ」
「そうなんすか?」
「あいつなら勝手に起きてくっから大丈夫だよ、しっかり者だからなー」
「まったく同じ兄弟でもお前とは全然違うのな」
「なーにいってんの、俺のが世渡り上手っしょ」
「まあちびはまだガキだしな」
「ちげーねえ」
ギャハハハハハハハ、と笑い声が聞こえる
あれ、今何か大事な事いわなかった?
っていうかあれ周りで笑ってるのって昨日夜飲んでた連中じゃね?
早起きだなー、あ、でもそんなに早くないのかな太陽ガンガンでてるし
そういえば時間よくわかんねえや
じゃなくて
「ちょっ、待て待て待って!」
「は?どした?」
「レンて、ちみっこの兄貴、なの?」
「そーだぞ、正真正銘兄弟だそうだ、全然似てねえよな」
「え、じゃあ、俺たちが探してたのは…」
「何だ、にーちゃんレンを探してたんか」
待て待て待て、こんな簡単に見つかっていいのか
っていうかちみっこ早く教えろよ、あ、でもあいつ昨日寝てたじゃん
じゃなくてこんな遊び人みたいな奴が皇子だなんておもわねえよ
待てまってくれ、俺は今何に焦っているんだ
何だこれはパニックか!?
いや、しかしさっきからレンは一言も喋らずニヤニヤしながら見てるだけだ
肯定でも否定でもいいからしてくれよ!!
いや、できれば否定してくれ
「れ、レンさん…」
やっとこさ頭の中が落ち着いてきたので声を掛けてみる
相変わらずレンはニヤニヤしているだけだ
「新婚旅行は何処に行きたいかな?ハニー?」
「!!!!?」
なんで知ってるのこの人!!
行方不明だったんじゃねえのか!?
「あ!にーさま!!」
「よぉちび、元気してたか」
「うん!ちびげんき!!」
「おーそりゃよかった」
いやこらまてちみっこ、お前実の兄貴にちびとか言われて喜んでるなよ
もしかしてこいつの名前ってちびっていうのか…?
いや、ないないない、多分
じゃなくてさ
「おいちみっこ」
「こーちゃんおはよー!!」
「おー、おはよう、ところでこの人はお前の兄貴か?」
「うん!!」
あら、満面の笑みですこと
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「ええと、じゃあ一緒に城に戻ってもらってもいいですかね?」
「んー、まあ随分帰ってねえし、こんな嫁貰えるんなら帰ってやってもいいかなー」
あの後場所を移し、俺たちは今レンが(俺も)泊まってた部屋にいる
実際こんなに早く見つかるなんて思ってなかったから見つかって何よりなんですけど
「てかさ、何で俺の事知ってる訳?」
「へ?」
「嫁って、俺昨日来たばっかなんですけど、あんた行方不明だったんじゃないの?」
「俺はずっとこの国にいたぜ?普通に遊んで暮らしてただけ」
「にーさまかくれんぼがとくいなのー」
「ま、街の連中は俺の事は知ってても皇子はとは知らないからな、探してもみつからねえよ」
「あーそーかい」
「お前の事は情報屋が教えてくれだぜ、シドは俺に連絡したい時は情報屋に流すんだ」
「じゃあ俺別に街に来ることなかったんじゃないの?」
「勉強になったろ、この国で生きていこうと思ったらまず酒ぐらい飲めるようにならねえとな」
「生きていくってそんな大げさな」
「甘いなお前、簡単に帰れると思ってんのか?」
「え…」
確かに、先の事とか全然考えてないし
この状況がいまいち現実味がないからそのうち元の生活に戻るんじゃないか
漠然とそんな事は思っていた
「今、この状況で、俺がお前を拒めばお前は右も左も解らないこの国で一人だぞ」
「…ひとり」
「伝手も知識も何も無いお前を雇ってくれる物好きはこの国にはいない」
「だからアンタの嫁になるって話を受けたんだけど」
「だからそれが甘いつってんの」
「は!?」
「そもそも男が男の嫁になるってありえねえだろ」
「シドさんは前例があるって」
「あったってそれは当たり前にあることじゃない、お前シドに上手く利用されたんだよ」
「うそ…」
「今俺には隣国の姫との縁談が持ち上がってる、だけどこの国にとってそれは避けたい、だけどはっきり断る訳にはいかない」
「だから先に嫁を作ってしまおう、って事?」
「そんなとこ、都合よくお前が現れたからラッキーだったんだろうぜ」
「でも、帰れる確立はゼロじゃないって」
「そりゃゼロじゃない、だけどちょっとやそっとじゃ帰る方法は見つからないだろうよ」
何だそれ、俺騙されてたのか?
いや、でも結局この話を蹴っても状況が悪化するだけなんだよな
逆に俺もこの状況を利用するしかないんだよな
「ま、本当の目的は俺を城に戻す事だろうがな」
「嫌なら帰らなければいいんじゃないの?」
「んな事したらお前の存在価値なくなるぜ、ほっぽり出されて野垂れ死にだな」
「まじで!?」
「まじで」
しばらく言葉がでてこなかった
どうすればいい、どうなればいい
頭が上手く回転してくれない
いや、初めから俺の頭は回転していない
いつも適当に話を聞いて、理解した振りして実は何も解っちゃいなかったんだ
これが甘いっていうことなのか
「なんてな、別に拒んだりしねーし、城にも一緒に戻ってやるから安心しろよ」
「え…いいのか?」
「あんまり苛めちゃ可哀相だしな、俺もお前が嫁になった方が何かと都合がいいし」
「そうなの?」
「だって男は孕まないだろ」
「へ?」
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