「三太ー起きてるー?」
「なんだよガキ、目上にはさんつけろって言ってるだろ」
「三太にさんつけたらサンタクロースになっちゃうじゃんか、じゃなくて五郎借りていい?」
「いいけど、手綱絶対に放すなよ」
「何で?五郎全然逃げないじゃん」
「今日明日は特別なんだよ」
「ふーん、解った」
三太は10年ぐらい前に町に現れた運び屋を生業としている駄目なおっさんだ
その頃俺はまだ6歳だったけれどよく覚えている
立派な角をもったトナカイを連れていて赤い服を着ていたからサンタクロースがきたのかと思ったのだ
だけど実際はそんな奴じゃなくて、名前こそ似てるもののぐうたらで適当で、でも憎めないそんな奴だった
それからこの町に住みついている、因みに俺は三太のお隣さんってやつ
重い物を運んだりするときに五郎をよく借りたりするのだ
五郎というのは三太が連れてきたトナカイの名前である
なんとも変な名前だ、三太はセンスがない
「五郎、もう少しで終わるからなー」
そういうと五郎はわかったとでも言うように擦り寄ってくる
こんなにおとなしいのに、今日明日はなんかあるのだろうか?
「あ、クリスマスか」
そういえば三太が赤い灯に近づくなといっていた
五郎はそれに向かって走っていってしまうそうだ
まあ手綱さえ持っていれば大丈夫だろう
そう思っていたのだが、それが甘かった
仕事を終えて、さて帰るぞ、という頃俺達は町外れにいた
辺りが薄暗くなっていて、町の外にある森は既に真っ暗だった
しかしその黒の中に一点の赤があった
あ、と思った瞬間に五郎は消えていた、油断していたので手綱も緩くしか持っていなかったのだ
「やばっ、待て五郎!!!」
だけど動物の足に人間が敵うわけがなく
五郎の姿はあっという間に暗い森の中へ消えていった
どうしよう、このままじゃ帰れない
そう思った瞬間俺の脚は森に向かっていた
こんな暗い森で迷わないはずがない
明るくたって町の人間はこの森になんか入らない
だけどあの赤に向かっていけばきっと大丈夫
そう思ってひたすら進んだ
途中つっかかったり転んだり何度もしたけれど
俺はとうとうたどり着いた、赤い灯に
そこは少し開けた場所で背の高い、枯れた木が一本立っていた、その枝に赤いランプが吊るしてあった
その木からちょっと離れた場所に小屋があった
窓から明かりが漏れている、人がいるようだ
そして俺はその小屋の扉を開けた
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